All You Need Is Kill / 桜坂洋

All You Need Is Kill (集英社スーパーダッシュ文庫)

All You Need Is Kill (集英社スーパーダッシュ文庫)

戦争物で時間ループでSFでちょっと恋愛物っぽくなりつつラノベな感じ。
なんというか、暑苦しい話とか、泥臭い話とか、あんまし好きじゃないのでどうかと思ってたのですが、意外といけました。文章が吐き捨てるように書いてある割に、普通に読みやすかったのが大きいと思います。話のほうはちょっと詰め込んだ感じでごちゃついてるかも。第4章は面白いんですけど。


以下ちょっとネタばれなので注意。

あとがきにもありますが、すごくゲーム的な構造をした小説です。システマティックな感じは何となく理系的。ただ、感覚や感情直結で書かれたものが好きなので、その辺があんまし好みじゃないのですが。ゲーム的な構造は最初の2章で顕著。主人公が物語を進めるといろいろなイベントがあって、最後にゲームオーバーになると、時間がループして帰ってくる。そしてアイテムはなくなってイベントもなかったことになって、経験値だけ残ると。また主人公は違うストーリーを選んで、違うイベントをこなして、最後にゲームオーバーしてやり直し。ゲームではないのはこの本の主人公は、この構造に自覚的なところ。要するにゲームのキャラクターがプレーヤーの視点で動いてる訳で、そうした時の世界の色あせっぷりたら。死んでも戻るし、何してもなかったことになってやり直しだし、大事なのは最後のボス戦だけ。そこに至るまでは毎回が作業で、毎回のループは経験値集め。そんな感じで話は進みます。
よくわからなかったのはループの謎解きで、ちょっと理解できませんでした。だってそういうことなら二回目のループで話が終わってんじゃないの? 何でグリーンティー知ってるの?っていう感じがして。酷く主観的な時間ループに二人の人間が混じってしまうものだから、どこまでが共有されてて、どこからがなかったことになった時間で、どこが真実なんだかわからなくなります。謎解きがよくわかってないからラストもよくわかんなくなってしまう訳で。
最終章はループの終わり。ゲーム的構造の破壊。やり直しが聞かないこととリタの存在で作業に陥ってた灰色な世界に色がついていく辺りはすごく好きです。どうも私はこの世界に色がつくような感覚っていうのはすごく好きみたいです。