スパイラル 〜推理の絆〜 14巻/ 城平京・水野英多

相変わらず好きです。
大仰な「運命」とその「構図」に翻弄される人々と、立ち向かう少年の物語。ついに神である清隆が仕掛けた運命というシナリオの大きな部分が明らかになって、物語はいっそう悲壮感を増しています。そして終末への気配がひしひしと。まぁ、その運命があまりにもトンデモな感じですが、そこはそんなことを気にさせないだけの吸引力があるから良いか。清隆は作者の位置に一番近いところにいる存在な訳だから、その作り上げたシナリオとしての運命とそのシステムは作品内では完璧に機能するので、その掌で踊らされる歩も火澄もブレードチルドレンも意思までも支配されてるようで悲惨な状況。悲しいほどに救いが見えないです。結局神のシナリオを歩がどう乗り越えるかがこの物語の大きなポイントな訳で、歩はこの運命を破ってくれるはずですが。
話の雰囲気自体はカノン編のようなアクション主体のわかりやすい盛り上がり方ではなく、緊張の糸が常に張ってるような息苦しい感じ。なにか少しずれたら全てが壊れてしまいそうな危うさと、そういう状況の悲壮感があります。特に怖いのが歩。一番酷い状況に置かれながら落ち着き、超然とした様子を見せるのが、逆にその背後の危うさと狂気を感じさせてなにか悲壮で恐ろしいものがあります。
この作者の特徴の真実がころころ変わる話の作り方はサプライズは大きいですが、話の把握は大変。一つ情報が明かされるごとに、清隆のシナリオが大きくその姿を変貌させるので追いかけるのが大変です。また、それぞれのキャラクターが持っている情報によって、見えている真実が違って、その真実に従って行動を起こしているので、キャラクターの行動論理の把握もなかなか大変。一応筋は通ってるようですし、説明もされていてそれで納得させられてしまうので構わないのですが。
大仰な台詞回しや演出は好み。連載当初から比べると絵もマンガ自体もすごく上手になったなぁと思います。
次巻最終巻。最後のどんでん返しと結末が待ってるはず。楽しみです。
満足度:A