- 作者: 長谷敏司,深遊
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/03/31
- メディア: 文庫
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魔法から見捨てられた地獄という世界で魔法使いと悪鬼とされる人間達が己の信じるところをかけてぶつかり合う様が、感情に直に訴えてくるだけの強さを持っていて、読んでいてグッと来るものがあります。ちょっと涙ぐんだシーンも多々。
刻印魔導師という重いものを背負った魔法使い達、神に近きものとして地獄に現れた英雄、地獄で地を這うように生きてきた英雄の弟、管理官として戦う人間、人間として暮らしてきた最後の魔法使い、経済の力を信じ地獄に生きる魔法使い、協会の論理、裏切り者、そして管理官仁と刻印魔導師メイゼルの価値観の違いを超えた絆。
これだけたくさんのキャラクター達が、それぞれの想いを掲げて、それぞれの道を必死に生きて、必死に戦っているということが、それだけでこの小説をすごいと思わせます。そして共存を許さない世界の仕組みの非情さが読んでいて苦しいです。主役はメイゼルと仁でこの二人の関係というのはやっぱり見所だと思うのですが、多分この小説は他のどのキャラクターを主役にしても面白いんじゃないかと思います。それだけ世界観に重みがあるし、キャラクターも厚いです。
個人的には人形師の最後の望みと鬼火の最後の行動にやられました。こんなの鬼火が格好よすぎです。メイゼルと仁の関係も切なくてよかったです。
読みづらいといわれる文章ですが、この言葉選びと独特なリズムが個人的には好みです。ただ、分かりにくい部分もあって最後の戦闘部分とか理解するのに時間がかかりました。これは魔法がどこまでできるかがはっきりしていないので、何がおきてるか理解しにくいというのもあるのでしょうが。やや冗長だったのとその辺もあって、ラストは少し盛り上がりにくかったかなぁとも思います。些細なことですが。
さて、まだまだこの先に続きそうなことをたくさん残しています。願わくば早いうちに続巻を。
満足度:A