東京ヴァンパイア・ファイナンス / 真藤順丈

新人賞4冠な作者の電撃小説大賞銀賞受賞作。
送り狼に失敗し続けるイマイチ冴えない狼男。振り込め詐欺への復讐に燃えるゾンビ老人グループ。愛しい人のために性転換手術を目指すフランケンシュタインな美女。そして情報屋を副業にしながら部屋に籠るドラッグデザイナーでスイーツ狂の魔女。
金に困る彼ら彼女らの前に現れるのは、トレイチ(10日で0.1%)の超低金利を売りにするヤミ金融ヴァンパイア・ファイナンスの少女万城小夜。査定を通った人間にあり得ない好条件で金を貸し付け、そればかりかそれぞれの事情にまで無理矢理首を突っ込んでくる小夜の破天荒っぷりが爽快な、東京の夜に蠢く化け物たちの物語でした。
アンダーグラウンドな世界を舞台に、ぶっ飛んだキャラクターたちが駆けずり回る様子が純粋に楽しい小説。それぞれ化け物に準えられたキャラクターたちも、一癖も二癖もある輩ばかりで賑やかな感じ。個人的には生まれ変わろうとする魔女のお姉さんが魅力的に感じました。
そして、描いている世界はアングラなのに、雰囲気が徹底して軽くてポップな辺りが印象的。ただ、ポップでカオスなエネルギーはこれはこれで気持ちの良いものですが、もう少しダークな部分がスパイス的に混ざっていた方が刺激的な物語にはなるかなという気もします。あと、せっかく4編の物語が並行して進んでいくのだから、もっと絡まりあって翻弄するような感じの方が面白いんじゃないかな、とか。
そんな感じで、楽しい物語でしたが、あと少しの物足りなさも感じる、ちょっと惜しい感じがある作品でした。