ヴァンパイア十字界 4巻 / 城平京・木村有里

一巻の頃からじゃ想像もつかなかったような話になってきました。
どうもあとがきによれば、城平京がこの作品でやりたかったのは空想科学特撮映画の要素を取り入れたヴァンパイアものらしいです。ということで異星人が移民船に乗って地球を侵略しにきました。地球側の最終兵器は惑星を一人で滅ぼすことができる力を持っているヴァンパイアの王と王妃だそうです。
…とまぁ、あらすじを書くとたいそう頭の悪い話になってますが、それでも面白いのがすごいところか。相変わらず情報を小出しにして話のどんでん返しを繰り返す感じで、その辺はスパイラルと一緒。今ある情報から確からしい真実が語られていても、次の情報が提示されたとたんに物語の構造が180度変わってしまうことがあるので注意が必要です。この手法で描いてるからスパイラルもこれも1巻2巻辺りがなかなか面白くならないんだって気もしますが、調子に乗ってくると非常に面白いんだからこれもありか。話は胡散臭さとアホくささを詰め込みつつも、常に予想の斜め上の展開で進行して楽しいです。突っ込みどころは色々ありそうですが気にしたらきっと負けです。
とにかく、この巻は星人フィオ関連の話のシリアスなバカバカしさが良い感じ。ストラウスもブリジットもまだ隠し事をしていて、話の本筋はこの先どこに転ぶかさっぱりです。星人フィオが何者かも含めて。次巻で明かされるだろうアーデルハイト関連の1000年前の出来事が、現在の局面の見え方をどう変えるのかが楽しみ。やっぱこの人の作る話は好きだなぁ。
満足度:A-