空の下屋根の中 2 / 双見酔

空の下屋根の中 (2) (まんがタイムKRコミックス)

空の下屋根の中 (2) (まんがタイムKRコミックス)

働くのはけっこう好き。でも、休みは休みで幸せ。
気が向いたときに働いて、そうでない時はダラダラしたい。
それが理想かな――


…うん。
私、ワガママなのかも…。

なんだかんだありつつおもちゃ屋さんでバイトを始めたかなえ。バイトは楽で、同僚も良い人で、でも、ずっとバイトでいいのかという疑問とか、将来への漠然とした不安とか、そんなようなものからまたハローワーク通いの日々に。
やりたいことってなんだろう。働くってなんだろう。そういう、就職活動を前にして誰もが考えるようなテーマを、今の空気で描いたこの作品は、日常4コマでありながら、かなり真摯に現代の若者と仕事に向き合っていると言ってもいいような気がします。
かなえの性格のせいでもありますが、描かれていくのはどこかふわふわとした実感の伴わない無職ライフ。頑張るのは明日からでも、むしろこのまま何もしなくも、とりあえず当面生きていくことはできるし、何がやりたいのかも分からない現実。でも、他方に見えるのはスキルも無いままに歳をとったら本当に職にあぶれるし、求人を眺めても高卒で応募できるのものは接客業ばかりという厳しい現実。
実感レベルでの危機感はないけれど、じわじわと募っていく焦燥感。でも頑張りたくはないと言う無気力感。そして頑張らなければ頑張らないで何事もなく、時だけが過ぎて行く毎日。
そんなかなえの心理はものすごく共感できて、読んでいると一緒に真綿で絞めらているようで、叫びたくなるような感じ。人間誰だって無理に働きたくはないのだけれど、何もしていない、何もできないということがじわじわと心を壊していくっていうのもまた確かだよなとしみじみ思ったりするのです。
やりたい事も見つからず、やれることも無く、でも何かを踏み出そうとしたかなえの一歩は、たぶん私にとっても他人事ではないもの。何かの目標に熱くなれるわけではないけれど、ほんのささやかな自己実現のために働き始める彼女の姿は、夢を描きづらいこの社会の中で、働きたくはないけれど日々働いていく私たちのためのものなのだと感じました。