ベン・トー 7.5 箸休め 〜Wolves,be ambitious!〜 / アサウラ

ベン・トーの短篇集2作目。とにもかくにも、1章に当たる150ページほどのどちらかというと中篇な「3.5倍」が強烈なインパクトでした。
佐藤たちが槍水先輩の妹の茉莉花を連れて向かった旅行での出来事を描いたお話なのですが、ベン・トーの斜め上に良い意味で頭おかしいネタ成分をぎゅっと濃縮したような一作でした。もはや鉄板と化した感すらある佐藤の小学生時代ネタで冒頭からフルスロットル。再び現れるサラリーマンレッドに、トイレでのある出来事を目撃して暴走する白粉大先生。何故か熱い展開に突入したかと思えばオチが付き、白梅様が平常運転だなぁと思った矢先の露天風呂事件。どこからどう考えてもアウトで犯罪の匂いのする佐藤×茉莉花展開に軽くドン引きしつつ、膨大なロリエネルギーによって再び世に解き放たれる霧島君、そして心霊現象調査研究部で始まるロマンス……。
あらすじをまとめただけでもはや意味の分からなさが漂いますが、実際のところはそれ以上のエネルギーで何かが駆け抜けていったような力強く頭の悪い作品でした。特に露天風呂のシーンは、一体作者は何に挑戦しようとしているのかと……。
そんな話もありつつ、後半は短い話が何本か収録。その中でも、著莪と佐藤の関係にスポットを当てるような短編があって、それが良かったです。長編の中では中々掘り下げられない二人の関係に、著莪が佐藤をどう思っているかから迫った感じなのですが、著莪が感じているものがまた良いのです。たぶん佐藤と著莪の居心地の良すぎるほどに居心地の良い関係は、いつまでも続きはしない、二人にとってはいつかは卒業しなければならないもののような気がするのですが、だからこそ今この瞬間の特別さがあって、もう少しだけ浸っていたいと思わせるのだろうなと。
そんな感じに一冊の中で雰囲気の違う話の楽しめる短篇集でした。面白かったです。