1518! イチゴーイチハチ! 3 / 相田裕

 

 何か特別大きなイベントがあったり、文化系だけど熱い競技だったり、生徒会と言いながら主にお茶してたりとか、そういうのでなくて本当に普通に生徒会活動をしていて、それは例えば烏谷の生きてきた野球の世界からすれば恐ろしく地味なはずなのです。でも、総会の準備をしたり会計の取りまとめをしたりしているその活動が本当に青春していて、それを通じて挫折から何もなくなってしまった烏谷が意味と目標を見つけていく、その日陰かもしれない場所で語られる再生の物語が大好きです。いい話だなあと。

あと三春先輩がヤバくないですか、東先輩との生徒会に入った時のエピソード、こんな誘われ方したらまず間違いなく惚れるでしょ……。

やがて君になる 3 / 仲谷鳰

 

やがて君になる(3) (電撃コミックスNEXT)

やがて君になる(3) (電撃コミックスNEXT)

 

 1巻を読んだときは「ヤバい」って言っていて、2巻を読んだときは「やばいやばいやばい」と言っていたのですが、3巻を読んでるときは「……っ」って声を失って悶えてましたよね。いやなんかもうちょっとこれさあ。

侑がそういうふうに変わっていくの……分かってたけど! 分かってたけど! みたいな。どちらが優位なのかで語れなくなってきた二人の関係がもう。

これまでは、さらっとした流れの中で鋭く刺しに来るみたいなイメージの作品だったのですが、もうここに至っては常に致命傷を与えてくる感じ。読み進めるごとにフィニッシュブローですよこれ。とにかく読んでとしか言えないシリーズです。ちゃんと身構えて読まないとやられますよ。

この世界の片隅に


映画『この世界の片隅に』予告編

なんかめっちゃ生きてた。戦争のあった時代の広島、呉という場所で、すずという人がめっちゃ生きていた。見ている間も見終わった後も、一つの物語を見たというよりも、ある人の話を深く聞いてきたみたいな感覚になる映画でした。
たぶん、よく言われている時代考証の綿密さだとかその他色々なこだわりがそれをもたらしているのだと思いますが、とにかくこんなに生活があった、生きてたと感じられる映画はなかなかないように思います。あまりにも一つの人生だったという感じが強くて、色々見ていて思うところはあったものの、あの時代あの場所を生きぬいた人の生活に私がごちゃごちゃ何かを言っちゃいけないでしょうと思わされる、それくらいのものがあった。
あと、のんのすずがもうはまり役だったとか演技が良かったとかそういう次元を超えて、これ本人だわ……としか言いようのないレベルで凄かったです。すずさんはほわっとしていて「あー」とか「えー」とかよく言うのですが、これがもう誰かが演じているというよりも、すずさんからはすずさんの声がするに決まってるじゃん、みたいな。あの生きてる感をもたらしているのは、この声も大きな要因だったのだろうなあと。
何が悪いとか何が良いとか、誰が良い人で誰が悪い人だとか、ドラマ性を強調したりだとかそういうものではなくて、ああいう時代にああいう生き方をしていた人がいたんだという映画。あまりに確固とした生活がそこにあったから、他人事というと言い方が悪いですが、境界がしっかりある感じ。でも、しっかりした輪郭があって、それが今にも通じるものと通じないものが綯い交ぜになっているから、今見ているすずさんの生活のスクリーンのこっち側にある、自分の生活ってどうなのっていうのを考えさせられるような作品でした。
とはいっても真面目に生きようとか正しく生きようとか、あるいは昔は良かったとか戦争は良くないとか、そういう大層なことは思わないのですが、なんというか、ちゃんと生きなくちゃと思います。いい加減でも良いけれど、安くしちゃいけないなと。

2016年の5+5作(小説・マンガ)

2016年も多少は増えたものの読了数は低い水準を維持しましたが原因はライブイベントとソシャゲですね。今年こそは神の積読をどうにか崩しきれないかと画策をしつつ、そんな読了本の中から面白かった小説・マンガ合わせて10冊を。

りゅうおうのおしごと! / 白鳥士郎

りゅうおうのおしごと!3 (GA文庫)

りゅうおうのおしごと!3 (GA文庫)

とにかく3巻が飛び抜けて熱く、面白かったです。才能の壁、年齢の壁。勝負の世界の中での持たざる者の闘い。ロリ推し描写が多いので若干のオススメしづらさも感じつつ、でもこれはもっと読まれて欲しい作品です。
りゅうおうのおしごと! 3 / 白鳥士郎 - FULL MOON PRAYER
りゅうおうのおしごと! 4 / 白鳥士郎 - FULL MOON PRAYER


雨の日も神様と相撲を / 城平京

カエルの神様と相撲をする青春伝奇という謎な小説ではあるのですが、いやまさかこんな構造をしてこれほど綺麗に収まるなんて。化かし化かされの青春譚。ちょっとこれは凄い。
雨の日も神様と相撲を / 城平京 - FULL MOON PRAYER


GOSICK GREEN / 桜庭一樹

GOSICK GREEN

GOSICK GREEN

新大陸編は、旧世界の大きな嵐を手に手を生き抜いた2人が幸せになるための物語なのだと。灰色狼が人間になるための物語なのだと。手紙のエピソードで泣きました。
GOSICK GREEN / 桜庭一樹 - FULL MOON PRAYER


魔法少女育成計画 / 遠藤浅蜊

積んでいた分も合わせて最新刊まで読んだのですが、JOKERS、ACES、QUEENSの三部作が素晴らしかったです。QUEENSのあるキャラクターの最期と関係性は本当に最低で美しくすらありました。
魔法少女育成計画 JOKERS、ACES、episodesΦ、16人の日常 / 遠藤浅蜊 - FULL MOON PRAYER
魔法少女育成計画 QUEENS / 遠藤浅蜊 - FULL MOON PRAYER


安達としまむら / 入間人間

語られるしまむらの心境と変化。祖母家への里帰りを舞台に語られるその手触りに入間人間の真骨頂を見た思いがあります。
安達としまむら 6 / 入間人間 - FULL MOON PRAYER


少年メイド / 乙橘

少年メイド 1 (B's-LOG COMICS)

少年メイド 1 (B's-LOG COMICS)

アニメからハマって原作に手を出したパターン。最近歳なので優しい作品を読むと涙腺にくるのですが、これは本当にヤバいです。これが尊みの何たるかだというのか。
少年メイド1〜9 / 乙橘 - FULL MOON PRAYER


ディメンションW / 岩原裕二

これもアニメから。ケレン味の利いた一大アクションエンターテインメント作品といった感じで素直に面白いです。新章が始まりましたが、どうにかエリーには幸せになって欲しい……。

Dimention W 1〜10 / 岩原裕二 - FULL MOON PRAYER
Dimension W 11 / 岩原裕二 - FULL MOON PRAYER


アイドルマスター ミリオンライブ! / 門司雪

未来、静香、翼の信号機3人の物語として素晴らしかったです。他のミリオンのキャラクターも出番は少しの子まで血が通っていて、作品への愛を感じられるのがコミカライズとしてはやっぱり大事だよなあと。
THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 3 / バンダイナムコエンターテインメント・門司雪 - FULL MOON PRAYER
THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 4 / バンダイナムコエンターテインメント・門司雪 - FULL MOON PRAYER


スピリットサークル / 水上悟志

7つの生を廻る物語であり、風太と鉱子の物語でもある。最終巻を迎え、全てがあるべきところに収まっていくような、心地良さのある物語でした。素晴らしかったです。
スピリットサークル 6 / 水上悟志 - FULL MOON PRAYER


虚構推理 / 城平京・片瀬茶柴

こんなの一体コミカライズでどうするんだと思っていた原作終盤に入っても素晴らしい漫画になっていて感嘆するばかりです。アニメ、アニメで見たい。なにとぞ。

2016年に触れた10の沼

2016年も怒涛のように過ぎ去り、ライブに行っては人が沼に墜ちる瞬間を眺め、気付けば自らも足を取られということの繰り返しだったように思います。触れる前から否定しないことを心がけ軽率に新しいものに手を出しては「すごい!」「ヤバい!」と語彙力を失っている毎日ですが、そんな中で一年間ハマっていたものの振り返りと紹介などを。

1.BanG Dream!

事故ですよね。
大橋彩香がドラムだ! ライブ行かなきゃ! なんか最前だ!! あああああ(沼に沈む音) っていう。
基本的にバンドの生演奏が好きなところに、推しの声優が何も遮るものなく目の前でドラムを叩いているっていうのが思った以上に破壊力があった。曲もElements Gardenなのでまあ外れないですし。声優とバンド兼務ということで、演奏は当然まだまだこれからの部分はあると思いますが、1stでもちゃんとバンドになっていて、ここからスタートしていくベースとしては十分。やっぱりガールズバンド良いわあってなります。アニサマ、2ndと回を重ねるごとに上手くなっていますし、2017年にはアニメやスマホゲームも始まり、2次元と3次元をミックスしたタイプの作品としては本格的に物語がスタートするここから面白くならない訳がないと思っています。
ブシロードらしい? 見切り発車で最初にとにかく大きな花火を打ち上げる展開に幾ばくかの不安も覚えつつ、その無茶振りに必死についていくメンバーたちの姿を応援したいなと。楽しみ!

2.大橋彩香

これまで何かのファンになった時に、思えば私はその人の才能だとか表現を好きになることが多かったように思うのですが、その人自身が好きになるっていうのはこういう感じなのだなと今ひしひしと感じております。
2016年は1stアルバム「起動 ~Start Up!~」の発売と共に公開された多数のインタビューだったり、ますます壁が崩れてきたあどりぶでのトークだったりで、笑顔の向う側にある、きっと何かあるのだろうと思っていたもののがちょっとだけ漏れ出てきた一年だったかなと。「RED SEED」みたいな諦念とそれでもの前向きさが入り交じった歌詞を本心に近いというのは、やっぱりそうだよねえと思う所があり、そんなアルバムを引っさげて、それでも自分の表現したいものは笑顔なんだと示した1stライブがとても良かった。
どうしようもないダメな感じに溢れんばかりに才能を過搭載して、そのピーキーさを愛嬌で成立させるような、この不思議なバランスが好きです。なんだろう、とにかく幸せになって欲しいな、この子が幸せになれる世界ならきっとそれはとても素敵なものだろうなと。

3.アイドルマスター シンデレラガールズ

765ASでもミリオンでもSideMでもない、もちろん他のコンテンツとも違うシンデレラガールズの何たるかというのを、SSA初日に個人ごとにバラバラの衣装で20人以上、しかもアニメのメインメンバー無しで並んだ瞬間に思い知りました。これがシンデレラガールズ、これぞシンデレラガールズ、まだ声もついていない子まで含め150を超えるキャラクターひとりひとり、誰もがシンデレラなんだと。そして彼女たちが終わらない物語を謳い上げる5周年記念曲「EVERMORE」で、この5年追いかけてきたものは間違いじゃなかったんだなと。この作品を私はまだ追いかけられる、追いかけていかなくちゃいけないと、そう思わせてくれる素晴らしいライブだったと思います。
あと流石に手間がかかって放置気味だったデレステですが、新宿のあの広告展開とそこに集まる人の盛り上がりを見たら復帰しますよね。ああ、今すごい波にのってるんだぞ私って。なのでSSRください。限定よしのん……。

4.μ's

一つ前に書いたデレマスが終わらない物語なのだとすれば、終わりある物語のなんたるかを見せてくれたのが2016年のラブライブ!、μ'sだったと思います。
映画でもって作中のμ'sが伝説となって、その物語をまるでなぞるかのように紅白出場まで駆け抜けた2015年から、ギリギリでコントロールされたような最高速を保ったままで東京ドームでのファイナルへ。これ以上は持たない、これ以上はできない、活動の最後に全てをぶつけて、彼女たち自身もまた伝説になった、そういうライブだったなと。
限られた時間を精一杯に輝くスクールアイドルという存在。必ず訪れる卒業という季節。だから奇跡だとか夢だとか可能性だとか、ともすれば陳腐な言葉を今という場所から叫び続けることができて。そんなこれまでを受けてのラスト2曲、「MOMENT RING」と「僕たちはひとつの光」。
終りがあるものだからこそをテーマに置き続け、終わらせてもらえなかったTV2期から劇場版を経たこの作品が、人気の絶頂で一つの終わりを迎える。それも『今が最高!』とキャストと観客が一緒に叫んで。そんな『みんなで叶える物語』。なんて美しく、出来過ぎなくらいだったと、心から思います。

5.魔法少女育成計画

魔法少女育成計画 (このライトノベルがすごい! 文庫)

魔法少女育成計画 (このライトノベルがすごい! 文庫)

1巻が発売された頃から好きだったけれど、こんなメジャーになれなさそうな作品に日の目は当たらないだろうと思っていた、そういうものが4年の時を経てまさかアニメで見れるなんて世の中捨てたもんじゃないなと。
2016年は滅茶苦茶に完成度の高いアニメが多くてその中で比べるとどうかなという思いはありますが、それでもアニメは出来が良くて毎週見るのが楽しかったし、何も知らない原作未読者が心を曇らせていく様子を見るのも、いとをかしという感じで。
可愛らしい魔法少女の皮を被った、凄惨なバトルロイヤル。魔法少女たちは死ぬときは無意味に当たり前に死ぬし、そんな彼女たちの抱えた背景も理由も世知辛く夢のあるものではない。そういうスタンスが貫かれているところがとても好きです。スノーホワイトの物語としてはここからなので、できればこの先の話も、アニメで見たいなあ……なんて。

6.KING OF PRISM by PrettyRhythm 応援上映

プリリズの知識もなく評判を聞いて観に行って、息をつかせずに繰り出されるドラッグめいた映像とまっすぐなストーリー、応援上映のもつ謎の熱量と一体感にすっかりやられて、映画が終わった後に笑いながら「世界が輝いて見える……」となるまさに圧倒的で鮮烈な体験。これは映画ではなく、全く新しい体感型エンターテイメントでした。
こればかりはどんなに言葉を尽くして「EZ Do Danceの中、大きな剣で切りかかったところを鋼のシックスパックで跳ね返して……」と語っても伝わらないので、続編の公開時に是非皆さん見に行ってください。楽しむコツは恥ずかしがらないことだ!

7.だれ?らじ

ラジオCD「だれ?らじ」Vol.1

ラジオCD「だれ?らじ」Vol.1

ミリオンライブのツアー大阪公演のMCでコントコーナーがあって、その時に一番面白かったのが「大阪スペクランド」でした。そんなスペースクラフト所属の誰だかわからない新人声優3人組によるラジオ「だれ?らじ」が始まったのが2016年6月。失うものがない3人の、ハイテンションで猛烈な殴り合いを繰り広げるラジオに可能性を感じて聞いているのですが、これがなかなか面白いです。ひたすらうるさい野村と、毒舌ツッコミから弄られキャラに転身したべいせんに、男色と晩酌が好きで実のところ一番ぶっこんでくる角元のコンビネーションの良さ、そして己をさらけ出してネタにしていく捨て身感。完成された面白さではないですが、これからも小奇麗にまとまらずに当たって砕ける精神でこの勢いを維持して、いつか守るものができる時まではラジオを続けていって欲しいなと思っています。
ただ最近ミリオンでこの3人を見かけるたびに、どんなに綺麗にしていてもだれ?らじでの姿が頭をよぎるので、正直この子たち失うものあったんじゃないかな……と思わなくもなく。

8.分島花音

luminescence Q.E.D.<初回生産限定盤>

luminescence Q.E.D.<初回生産限定盤>

Zepp DiverCityでのライブが本当に素晴らしかったんですよ。
単独では初めての大きな会場でやるということへの想い、自分自身のやっている音楽への想い、そういうものが公演を通じて溢れてくるような。ライブというのは自分を表現して、誰かに伝えようとする場なんだなと改めて身にしみるような。なんて表現するかと言えば、本当にエモいライブだったと思います。ツアータイトルでもあった「Unbarance by me」の歌詞が、本当にもう。
そしてまた、分島花音のライブは音楽って本当に楽しいなと思わせてくれるのが素敵です。ポップス、ロック、ジャズにクラシックと広いジャンルを行き来しながらチェロを引き歌う彼女とバンドの姿に、ああ楽しいなと思い、終わった後に良いライブだったまた来よう! と思えるライブ。2017年は大きな全国ツアーもあるので、アルバムを聞いてみて興味をを持った方は是非足を運んでみてください。

9.西沢幸奏

TVアニメ「学戦都市アスタリスク」オープニングテーマ「The Asterisk War」

TVアニメ「学戦都市アスタリスク」オープニングテーマ「The Asterisk War」

1stシングルの「吹雪」の印象が強い方は是非「The Asterisk War」のPVでギターを掻き鳴らしながら歌う彼女のカッコよさを見て欲しいなと思います。そう、あの声とギターとライブでの立ち振舞なんですよ幸奏はっていうのが、存分に示されたのはアニサマの舞台。それまでもすごく才能と可能性がある子だと思って楽しみにしていたのですが、あのでかいステージであれだけのパフォーマンスを見せてくれるのはその期待以上でした。いやカッコよかった。
イベントでMCをする様子は年相応な感じで、そういうまだまだこれからの未完成さと、そして間違いがない可能性。2017年はきっと1stアルバムや1stフルライブがくるはずで、とっても期待しています。

10.G1 CLIMAX 26

G1 CLIMAX 2016 [DVD]

G1 CLIMAX 2016 [DVD]

相変わらず新日を見続けているプロレス。リアルだとかフィクションだとかそういう話ではなく、大事なのはリングの上で何が表現されるのか。そこに物語があり、生き様があり、レスリングがある。ああ、これは単純だけれど単純なものではないのだなと、2016年はその深さにちょっとだけ触れたような気がする1年でした。そしてこれはある瞬間に何かを表現する、それを誰かに見てもらうという、普段見に行っているライブだとか、色々なものにも通底する話でもあるのかなとも。
そんな中でもワールドの配信で全戦追いかけて、最後は両国国技館にも観戦に行ったG1。ケニーvs内藤という名勝負あり、そしてケニーの優勝が嬉しかったです。好きな選手なので。1.4でもオカダに勝ってくれないかなあ、その方が世界展開には良いんじゃないかなあとか。


その他

本とマンガは別エントリで上10個以外に印象的だったものとかを。
スポーツは相変わらずF1を見たり野球を見たり。阪神は超変革ということで岩貞、青柳、原口、高山、北条と若虎がどんどん出てきたのが楽しかったです。こんなことはここ10年無かったぞと。

減らすつもりが何故か去年より増えていたライブ/イベントだと夏の内田彩武道館。30曲以上を歌いきることも凄かったですし、2ndまでとは別人かと思うくらいの堂々としたパフォーマンスと1曲毎に入り込んだ表現が凄かったです。内田彩役の内田彩さん完成してた。あとシンフォギアライブの会場の一体感も凄かった。あれが適合者か。それからミリオンツアーはミリオン一座という37名のチームが階段を登っていく過程としても素晴らしかった。全ての集大成としての幕張2日目は見どころしかない本当に最高の公演でした。岸田教団の野音は意識が変わったというか、これまでの岸田教団じゃないぞというのが武道館目指す発言で爆発した感じ。ZAQは体調不良があって、逆に彼女の歌に対する想いが溢れていました。そして年の終わりに見た上坂すみれのエンターテインメントとしてのワンアンドオンリーさよ。間違いなくチーム上坂すみれによるチーム上坂すみれにしか出来ない舞台でした。楽しかった。

音楽は大橋彩香ZAQ分島花音の新アルバム、Kalafinaのアコースティックアルバムといったファンをやっているところの人たちの作品が軒並み素晴らしかったので幸せでした。ZAQは提供曲では「ヴィヴァーチェ!」が素晴らしい卒業の歌で泣きそうです。ユーフォ見てないけど。あとアルバムでは「Walkure Attack!」が抜群に出来が良くてさすがマクロス……と。それから今年ヤバいと思ったのはさユり。"酸欠少女"による大人には出来ない音楽。その切実さ。梶浦由記野田洋次郎と大物からの提供曲が続きますが、本人の書いた曲が特にヤバい。CDJでライブを見てもうこれはダメだと思ったので2017年は単独ライブ行きたいです。声優では麻倉もも。正直こんな良いものが出てくるとは思っていなかったHoney Works恐るべし。あとMV見てもちょの犬になりたいと持った人は私だけではないはず。バンド系だとハイキュー! のOP「ヒカリアレ」を歌ったBURNOUT SYNDROMESはシンプルな力強さがあって好きです。あとは相変わらずキャラソン全盛のアニソンシーンでSB69のシンガンクリムゾンズ、BUD VIRGIN LOGICのアニメ曲は良かった。グラブルの「Never Ending Fantasy」はイベントも相まって好き。
アイマス曲はデレステが今までにない幅の曲を連発していてとても良いのですが特に往年のBeing/GIZAファンを殺しに来たとしか思えない「Love∞Destiny」があかんかったです。ミリオンだと「侠気乱舞」のさりげないオシャレ感に「夜に輝く星座のように」のベタベタな歌謡ポップスぶりが好き。あとライブ込みで「アイル」も。SideMは基本曲が強いのですがS.E.Mの「サ・ヨ・ナ・ラ Summer Holiday」が最初の2曲からの落差込みでヤバいと思いました。

アニメはあれこれ面白いんじゃない? からこれくっだらなくて凄い面白いぞに駆け上がった「この素晴らしい世界に祝福を」。思わずマンガを買いに走ったのは「ディメンションW」と「少年メイド」。「91days」のマフィアもの路線も面白かったですし、「クロムクロ」は安心して見られるお約束満載のロボットもの。「ラブライブ サンシャイン」は3年組の痴情のもつれとか、曜ちゃんそれはあかんだとか、百合方面が大変よろしく。スペース任侠道こと「鉄血のオルフェンズ」はどんどん破滅に迫っていく感じと滲み出るマリー成分が好き。「NEW GAME」も終わってみれば良いお仕事ものになっていたなと。秋は大豊作でスケートシーンの素晴らしさはもちろん結婚したー!? バイクでさらいに来たー!? だとか全面的に大変だった「ユーリ!!!」に、めちゃめちゃ動く作画と意味不明なところから描きたいストーリーがはっきりとしていく「フリップフラッパーズ」、頭のおかしさなら追随を許さなかった「競女!!!!!!!!」に、ど王道どつきあい格闘技友情ものを美少女百合ものと合わせた「Vivid Strike!」、スポーツ観戦の緊張感まで表現しきった「ハイキュー!」と素晴らしかったです。なんだったんだこのクール。

そして映画。新海誠っぽさを残しつつきっちりエンターテインメントしていた「君の名は。」はしみじみいい映画でしたし、「シンゴジラ」は何も期待していなくてごめんなさいって謝りたくなるくらい、ずっとスクリーンに釘付けにされる2時間でした。無人在来線爆弾!!

血翼王亡命譚3 / 新八角

1巻を読んだ時にはちょいちょい引っかかるところがあって、この設定でこのストーリーであればこんなものじゃなくてもっと面白くなるはずと思って、2巻になってそれがずっと良くなって、3巻に来たら凄いものに昇華してきたなあと。
400ページに本来2巻3巻かけるような内容をぎゅっと濃縮したこれでもかという密度の高さと、最初から最後まで落ちないテンション、ぶつかり合うキャラクターたちの痛いくらいの想いに、始まりの王にまで時空を超える大きな物語、けれどあくまでもこれは王の傍らに立つ者であるユウファという護武官の物語で。言血を始めとする独特の世界観の中で、国とは、人間とはという大きなテーマと、その中で語られるユウファという一人の人間の物語が1巻、2巻のストーリーも含めて一つにまとまっていくのが素晴らしかったです。
決してスマートではなくて、荒っぽい作品だとは思うのですが、ダイナミックな展開の魅力と共に、斬りつけるような感情の強さがあったと思います。そこにいるキャラクターたちに強さ、圧があるというか、説得力があった、みたいな。どのキャラクターも魅力的だったし、とても面白かったです。

上坂すみれのひとり相撲2016 〜サイケデリック巡業〜 @ 両国国技館

生産! 団結! 半抑圧!! ура!!!
散々ライブに行きまくった2016年ですが、年の瀬にまたとんでもない怪演に出会ってしまったという気分でいっぱいです。とりあえずすみぺの次の大きなライブは絶対に行こうと思ったライブでした。いや、これは面白い。
毎度すみぺのイベントレポの意味不明さに言及する度に、同志の人々からありのままだと言われて頭に疑問符を浮かべていた訳ですが、うん、そのまんま書いたらああなるんですねよく分かった。とにもかくにも、見たことがない人やフェスでしかすみぺを見たことがない人は、欠片でも興味があるなら単独現場足を運ぶことをオススメします。見なきゃわからないし決して見て損はないですから。
まずひとり相撲というライブタイトルがおかしいのは置いておいて、始まったと思ったら長机に実況と解説が座っていて見どころのコメントを始めるんですよ。配置的にはプロレスのあれ。というかプロレスですよね、すみぺvsプロデューサーのアングルの入れ方が完全に。そして楽屋中継から煽りVTR、明けるとリングアナがセンターステージにいて呼び込みと共にレスラー引き連れたすみぺがズブロッカ片手に花道から登場。さらにプロデューサーと小競り合いを繰り広げて伏線回収。
まあ、ひとまず自分は一体何を見に来たのかと我が身を疑いますよね。まだ一曲も歌ってないですからね、ここまで。そもそも若手女性声優のライブで繰り広げられる光景じゃないですよね。この辺でライブを見に来たという先入観は完全に捨てましたが、ここからはしばらくきっちりとライブ。楽曲のサブカル路線を走りながらのメジャー感が独特で面白いです。エレガと人間椅子の曲が連続して披露されるライブってなんだ。
そんなこんなで終盤、ようやく慣れてきて落ち着きを取り戻したと思ったところで、国技館に響き渡る拍子木の音。なんか聞いたことのある声のアナウンスが「西方土俵入りであります」と。そこそこ良い体格をされたどすこいダンサーズの皆さまが、センターステージを土俵に見立てて土俵入りをはじめました。まわし締めて一人ずつ土俵に上がって名前を呼ばれて丸く並んで最後に振りがあるあれです。NHKの相撲中継で十両の取り組みが終わった後に見られるガチのやつです。女性声優のライブを見に来たはずが、太ったおっさんたちが国技館でなんちゃって土俵入りをする様を見ていました。……まるで意味がわからない。
そんなこともありつつ、エアリアルダンサーが宙を舞ったり、ダンサーズの衣装は何度も変わるし豪華だし、炎は上がるし、どすこいダンサーズは大量にいるしで、演出は全体通してめっちゃ豪華でした。……豪華だけど信じられない絵面が眼前に広がるのあれなんですかね。アンコールのエアリアルダンサーが宙を舞いの、太ももセクシー衣装+ライブTシャツなダンサーたちが舞い踊りの、大量のどすこいダンサーズが相撲の動作を取り入れた動きを見せつつの、ミニスカサンタ風衣装のすみペが真ん中にいての、会場全体で「むろみーーー!!!」と叫ぶあの空間はマジで異空間だった。あとアンコールのコールが「取り直し!」だった。初めてだよそんなの。
アニゲラというか杉田智和プロデュースの転換中のVTRにしても、時事ネタからオタクネタ、他の声優いじりネタまで盛りだくさんのすみぺのMCにしても、とにかく己のセンスを信じてこれが行く道なんだよと見せつけるような感じのライブだったと思います。上坂すみれという人は歌が上手い人だとは思っていなかったし、曲もそんなに好きな訳ではなかったのだけど、これはそういう問題のものではない。ついでに言えば声優であることすら関係ない。共産趣味の中野系サブカルがバックボーンでオタクシーンの最前線を走り内向的後ろ向きだけどこんなステージに立っちゃう独自のキャラクターを持って、上坂すみれとそのプロデュースチームが作りあげた一つの表現なんだろうなと思います。
メジャーでサブカルでオタクで文化系でフィジカル系で豪華だけどどこかアングラで、色々なものがごっちゃになった上で本人のキャラまで含めて奇跡的なバランスで成り立っているこの感じ。変人たちが真っ向勝負で作り上げる本気の茶番っていうか、そういうものが両国国技館という割と大きな会場でお祭り感のある一大エンターテインメントとして昇華されているのは、素直に凄いと感心しました。
あとすみぺがですね、可愛いですね、うん。改めて単純に美人だっていうのもありますが、凄く近いんだけど一線は引いた感じのファンへの距離感の取り方とか、後ろ向きなんだけど前には進んでる感じとか、ああこれは推す人が出る訳だなと。最後の最後の「本当は可愛いって言われたい!」まで、なんというかこう、文化系的なというか、いい意味でオタサーの姫の一番強いやつ的な魅力に溢れておりました。