【小説感想】推理作家(僕)が探偵と暮らすわけ / 久住四季

 

 久住四季久々の新作ミステリは、美形で変人の名探偵と生真面目な作家が事件に挑むもの。生粋の変人だけどとにかく頭はキレる凜堂と、その彼に振り回される語り手の組み合わせは、なんというか、作中でも言及される通り明確にホームズとワトスンへのオマージュで、現代日本でその関係をやったものという感じです。

いきなり火事で住処を失った僕が先輩の紹介で凜堂とルームシェアを始めた際の出会いの事件と、もう一つの事件からなる二本立てですが、どちらも話としては少し小粒な印象もあります。ただ、少ない分量の中でも起きた出来事とキャラクターをきっちりと示していき、それが過不足なく組み立てられて解決へと繋がっていくスマートさは読んでいて気持ちよく、やっぱり久住四季作品は良いなと思いました。事件にもキャラクターにも、無駄と嫌味のない感じがとても好みです。

話としては始まったばかりで、この暇を持て余した変人探偵が難解な事件に嬉々として向かっていく姿もまだまだ見たいですし、それに振り回される僕の姿ももっと読ませて欲しいと思うので、今後のシリーズ展開に期待しています。

2018年の6作(マンガ)

続刊ばかり読んでいたので、2019年は少しは開拓したいな、とか。

 

魔法少女サン&ムーン ~推定62歳~ / サメマチオ

魔法少女サン&ムーン~推定62歳~ (バンブーコミックス)

魔法少女サン&ムーン~推定62歳~ (バンブーコミックス)

 

 魔法少女だったから生まれた人生のロスタイムに、老女たちが向き合うものは。だからライフ イズ ビューティフル。素晴らしい作品でした。

魔法少女サン&ムーン ~推定62歳~ / サメマチオ - FULL MOON PRAYER

 

よつばと! / あずまきよひこ

よつばと!(14) (電撃コミックス)

よつばと!(14) (電撃コミックス)

 

 刊行期間が空いても流石のよつばと! だったのですが、それよりも小春子というもの凄い破壊力のキャラクターが生まれてしまって大変。

よつばと! 14 / あずまきよひこ - FULL MOON PRAYER

 

はるかなレシーブ  / 如意自在

 青い空! 青い海! 白い砂浜! 水着! スポ根!! 百合!!! みたいな力強さ。勝負と感情。良きものです。

はるかなレシーブ 1-6 / 如意自在 - FULL MOON PRAYER

 

ボクらは魔法少年 / 福島鉄平

ボクらは魔法少年 1 (ヤングジャンプコミックス)

ボクらは魔法少年 1 (ヤングジャンプコミックス)

 

 性癖を煮詰めたような極地から突きつけられるのは、読者自身の固定観念。これはなんだか凄い作品始まっちゃったんじゃないかっていう。

ボクらは魔法少年 1 / 福島鉄平 - FULL MOON PRAYER

 

1518! イチゴーイチハチ  / 相田裕

1518! イチゴーイチハチ! (6) (ビッグコミックス)

1518! イチゴーイチハチ! (6) (ビッグコミックス)

 

 ナカナツ! 周回遅れ系ヒロイン!! 嗚呼、文化部の青春!!! って感じ。

1518! イチゴーイチハチ! 5 / 相田裕 - FULL MOON PRAYER

1518! イチゴーイチハチ 6 / 相田裕 - FULL MOON PRAYER


THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS U149  / バンダイナムコエンターテインメント・升之

 素晴らしい絵と物語でキャラクターたちを、ここまで丁寧に、愛情込めてに描いてくれたらもう何も言うことはありません。原作コンテンツありコミックの理想形。

THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS U149 2 / バンダイナムコエンターテインメント・廾之 - FULL MOON PRAYER

THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS U149 3 / バンダイナムコエンターテインメント・廾之 - FULL MOON PRAYER

THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS U149 4 / バンダイナムコエンターテインメント・廾之 - FULL MOON PRAYER

2018年の10作(小説)

2018年は一時期に比べると割と本を読んだ一年で、なんだかんだ私小説読むの好きだなと思った一年でもありました。ここ数年の積本をちょこちょこと崩したので、2019年は新しいシリーズなんかにも手を出していきたいところ。


私が大好きな小説家を殺すまで / 斜線堂有紀

私が大好きな小説家を殺すまで (メディアワークス文庫)

私が大好きな小説家を殺すまで (メディアワークス文庫)

 

 ある小説家を神さまにした少女の、信仰の物語。あなたの神さまを思い浮かべながら、是非。

私が大好きな小説家を殺すまで / 斜線堂有紀 - FULL MOON PRAYER

 

GODZILLA プロジェクト・メカゴジラ / 大樹連司

 アニゴジ前日譚第2段は、人類の絶望的な闘いを前巻以上のスケールでお届け。映画は見てなくても、怪獣モノが好きなら読んで欲しい一冊です。

GODZILLA プロジェクト・メカゴジラ / 大樹連司 - FULL MOON PRAYER

 

東京レイヴンズ 16 [RE]incarnation / あざの耕平

 永き時を超え輪廻の輪が繋がる時、実は1巻からずっと描かれ続けていた、あまりにも濃い幼馴染の物語に圧倒されました。

東京レイヴンズ 16 [RE]incarnation / あざの耕平 - FULL MOON PRAYER

 

りゅうおうのおしごと!  / 白鳥士郎

 7巻も良かったけど2018年は9巻。完璧な夜叉神天衣の物語。パーフェクトです。読みたかったものがここにある。ありがとう白鳥先生。

りゅうおうのおしごと! 7 / 白鳥士郎 - FULL MOON PRAYER

りゅうおうのおしごと! 8 / 白鳥士郎 - FULL MOON PRAYER

りゅうおうのおしごと! 9 / 白鳥士郎 - FULL MOON PRAYER

 

虚構推理短編集 岩永琴子の出現 / 城平京

虚構推理短編集 岩永琴子の出現 (講談社タイガ)

虚構推理短編集 岩永琴子の出現 (講談社タイガ)

 

 語り口には様々なバリエーションがありつつ、嘘の中で理を通す、これぞ「虚構推理」という短編集。

虚構推理短編集 岩永琴子の出現 / 城平京 - FULL MOON PRAYER

 

悪魔の孤独と水銀糖の少女 / 紅玉いづき

悪魔の孤独と水銀糖の少女 (電撃文庫)

悪魔の孤独と水銀糖の少女 (電撃文庫)

 

紅玉いづきの描く、少女という概念。それはもう、素晴らしいに決まっている訳で。 

悪魔の孤独と水銀糖の少女 / 紅玉いづき - FULL MOON PRAYER

 

賭博師は祈らない  / 周藤蓮

賭博師は祈らない(4) (電撃文庫)

賭博師は祈らない(4) (電撃文庫)

 

 物語もキャラクターも丁寧に積み重られ、こうなって欲しい展開が欲しい時に来てそれ!!! となる、読んでいてとても気持ちの良いシリーズです。

賭博師は祈らない / 周藤蓮 - FULL MOON PRAYER

賭博師は祈らない 2-4 / 周藤蓮 - FULL MOON PRAYER

 

やがて君になる 佐伯沙弥香について / 入間人間

 アニメやマンガで彼女を直視できなくなる、佐伯沙弥香という概念を純化して濃縮した危ないクスリみたいな一冊。

やがて君になる 佐伯沙弥香について / 入間人間 - FULL MOON PRAYER

 

ハル遠カラジ / 遍柳一

ハル遠カラジ (2) (ガガガ文庫)

ハル遠カラジ (2) (ガガガ文庫)

 

 人類の消えた世界を行く、病を抱えたロボットと野生児だった少女の物語。そして、家族の物語。感傷的で、美しい作品です。

ハル遠カラジ / 遍柳一 - FULL MOON PRAYER

ハル遠カラジ 2 / 遍柳一 - FULL MOON PRAYER

 

閻魔堂沙羅の推理奇譚 / 木元哉多

閻魔堂沙羅の推理奇譚 (講談社タイガ)

閻魔堂沙羅の推理奇譚 (講談社タイガ)

 

 死んだ人間が閻魔の前で生き返りをかけて自分を襲った出来事を推理する形式の短編集。高値安定のクオリティで安心して読めます。

閻魔堂沙羅の推理奇譚 / 木元哉多 - FULL MOON PRAYER

閻魔堂沙羅の推理奇譚 負け犬たちの密室 / 木元哉多 - FULL MOON PRAYER

閻魔堂沙羅の推理奇譚 業火のワイダニット / 木元哉多 - FULL MOON PRAYER

閻魔堂沙羅の推理奇譚 点と線の推理ゲーム / 木元哉多 - FULL MOON PRAYER


【小説感想】ハル遠カラジ 2 / 遍柳一

 

ハル遠カラジ (2) (ガガガ文庫)

ハル遠カラジ (2) (ガガガ文庫)

 

 病を患ったロボットのテスタと、そのロボットに育てられた野生児の少女ハルが、病を治す術を求めて、ほとんどの人類が消えてしまった世界を旅する物語。1巻が親子の物語であったとすると、これは友人の物語なのだと思います。ハルとイリナの間に芽生え始めた関係であったり、リンという女性に仕え続けたアニラであったり、テスタと旧友のモディンとの関係であったり。そしてロボットであるテスタの語りは、人間ではない論理的な思考と、AIらしからざる感情が溶け合って、非常に感傷的で美しい手触りがあります。

そう、長谷敏司による帯コメントで言われていることがまさにで、本当に狂おしく感傷的で、美しい物語だと思うのです。突然、滅びてしまった世界の中を行く、ロボットと少女。残された自然と動き続ける機械や都市。そこで出会う者たちとの会話は、基本的に過去に向かっていて、そこには滅びの匂いと、その先に続いてしまったものの感傷があります。贖罪のために子どもたちを守ろうとしたリンと仕え続けたアニラの関係とか、誰も来ない喫茶店を続ける旧世代ロボの話とか、胸にくるものが。

けれどこの物語は終わってしまった世界の中で感傷に浸るだけではありません。ロボットと彼女が育てた少女の間には、ありえるはずのない親子の情が生まれ、己の身を護ることだけで必死に生きてきた野生児は、同年代の少女との暮らしの中で、自分自身の欠けているものと、人間との付き合い方を学んでいく。人が滅びた世界で、身につけても意味があるかわからない社会性なんていうものを、それでも彼女たちは教え、学んでいく、変わっていく。いつでも、あるかどうかもわからない、未来を向いている。それが、たまらなく尊く、美しい作品だと思います。

少しずつ明らかになっていく世界にまつわる謎が浮き彫りにするのは、滅びるべくして滅びた人間たちの姿で、決して明るい見通しは許してくれません。それでも彼女たちの旅の先に、わずかでも光あれと思います。

【マンガ感想】THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS After20 2 / バンダイナムコエンターテインメント・半二合

 

 しみじみと良いマンガだと思います。

それぞれにアイドルとして活動をしている大人たちが、集まって美味しいものを食べて、美味しいお酒を呑む、そういうことをできる場があるということ。仲間がいるということ。それだけだと、集まって飲むだけで、ともすればぐだぐだになりそうなのですが、この作品の場合、新しい出会いと新しい挑戦が新しい世界を開くというテーマが貫かれています。自立した個人として活動していく中で、たとえ落ち込んでもそうやって集まれる場があるからこその挑戦だったり、そこから生まれる人の繋がりだったり。お互いの丁度よい距離感と、前向きさというか向上心、良い意味での意識の高さがあって、それがAfter20を冠する大人アイドルたちの物語にとてもマッチしていると感じます。

あと、この作品の志乃さん本当にカッコ良いので、CDのドラマパートでいきなり喋っても良いんじゃないかと、私は思うんですよ。ほら、次の巻あたりで、ねえ。

12月のライブ/イベント感想

12/1・2 THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 6thLIVE MERRY-GO-ROUNDOME!!!  @ ナゴヤドーム


12/7・8 BanG Dream! 6th☆LIVE @ 両国国技館

R・I・O・T[Blu-ray付生産限定盤](メーカー特典なし)

R・I・O・T[Blu-ray付生産限定盤](メーカー特典なし)

 

 初日はRAISE A SUILEN、2日目がPoppin'Partyというバンドリ6th。いやとにかくRASが楽しかったです。そりゃあ平日の国技館は埋まらなかったのだけど、でも熱量は確かにあった。というかオリジナル3曲がどれも細かいことはいいからぶち上がれ! 暴れろ! っていう強力な曲なので楽しくない訳がない。バンドリの中では経緯的にも一番バンドらしいバンドなので、そういう部分を担っているのかなという気もします。

ポピパは、凄く上手くなっているのだけど、それだけにもっと曲数が欲しいなと思ってしまうのが難しい。展開的にも今はアニメ2期への溜めなので、2019年はキャラとリアルライブが並行で動くからこその何かをもっと見たいと思いました。

 

12/14 KURUIZAQ ver.2018 @ 新宿BLAZE

Z-ONE(通常盤)

Z-ONE(通常盤)

 

 ZAQのライブの終盤にある、とにかくアッパーで盛り上がる曲を詰め込んだ「絶対殺すゾーン」が全編に渡ってお届けされるライブ、つまり最高に楽しい。セトリがすごい。様々な音楽ジャンルを取り入れながら、何を作っても異様にキャッチーなZAQの曲になっていること、それをステージでやりきるZAQとバンドメンバーに、待ってましたとばかりにラストまで盛り上がり続ける観客。そんなん良いライブに決まってるじゃんって。最高でした。

 

12/22 少女☆歌劇 レヴュースタァライト 2ndスタァライブ”Starry Desert”  @ パシフィコ横浜


12/28 Composers Summit Concert 2018 @ 東京国際フォーラムA

www.csc2018.jp

アニメ・ゲーム系に曲提供をしている作曲家を呼んでコンサートを行うというコンセプトのイベント。何より梶浦由記の単独ライブではない、オーケストラとの共演が聞けただけでも大変良かったです。椎名豪、スペシャルゲストの千住明のステージも贅沢な時間だったなあと。ちょっと進行とかで段取りに不安を感じたりする場面もありましたが、これからも続けて欲しいイベントだと思いました。

 

12/29 小山剛志カラオケ企画第9弾『カラオケMAX』@ ベルサーレ高田馬場

karaokemax.jp

カラオケMAXは細かいことを考えずにとにかく楽しいことが絶対正義だと思います。声優のカラオケイベントなのに、オーイシお兄さんが出てジャパリパーク歌ってくれたりというゆるさも、出し物としてのレベルが上ってきてるカラオケコーナーも、意外な選曲や納得の選曲も、全部歌うって、カラオケって楽しいなというところからブレがないのがいいなと。あと人生で置鮎さんの生歌を聞く機会があるとは思っていなかったし、まさか御本人のウサミミ仮面が聞けるとも思ってなかったのでそれだけでも価値があった。

2018年に触れた8の沼

今年もよく足を滑らせた。

小説とマンガの話は別に書きます。

 

1.アイドルマスター シンデレラガールズ

ドレミファクトリー!

ドレミファクトリー!

 

 毎年言ってますけど、こんなに私シンデレラガールズ好きなんだなって思った年はないっていう感じで。だってあの最高のドームライブがあって、そこでの大々的な新アイドル発表から、昔と何一つ変わらない雑な個性のみを身に纏ってあかりんごが投入されるなんて思わないじゃん? そうだよこれがモバマス……って思いました。

そしてドームツアー4公演。最高。前回ツアーで組んだ基礎の上に、パフォーマンスもセトリも演出も全部が噛み合って花開いた感じだった。あれだけの出演者数がいる中で、出し惜しみ無しで様々な工夫を盛り込みいろんなPを殺しに来るライブ初めてだったのではという感じ。シンデレラガールズというコンテンツを全身に浴びて無事死亡、みたいな感じの4公演でした。

そして今年何が起きたかといえばもうU149ですよ。キャラクターの描き方も、ストーリーもとにかく丁寧かつ愛情が感じられて完璧なんですけど、1月に2巻が出て、結城晴に声がついて、前から好きではあったビートシューターに気がついたら深みにハマっていたっていうのが大トピック。そこからは運営のプッシュが晴にかかって怒涛の展開で、そしてメットライフドーム2日目ですよ。ああ、これが感情。

それでね、来年はね、梨沙にね、声をつけたいんです。ちょっと遅くなってしまったけれど、相方は随分先へ行ってしまったけれど、隣に立たせてあげたいんだ。

 

2.プリンセスコネクト!Re:Dive

Lost Princess

Lost Princess

 

 元々触れるつもりはあんまりなくて、実際始めたのは配信開始から1ヶ月後くらいなのですが、未だに続いています。全てにストレスがなく、そして適度に面白いという、この丁度いい塩梅が長く続いている要因かと。

各種操作のストレスの無さ、ほぼオートだけど組み合わせや育成にはやればやるほど考える余地がある感じ、SDキャラが可愛く動きなんとなく爽快感のあるバトル、スキップでサクサク進む周回。ゲーム性と手軽さを絶妙なバランスで両立していて、無理なく続けて何かをやってる感はある、みたいな。ゲームへの忍耐力を失った私も優しく甘やかされる感じ。気がついたら随分時間を持っていきますが。

日日日シナリオのストーリーも無難の皮を被って隠しきれないエッジがあって適度に面白く、気がついたら次の開放が楽しみ。キャラクターはお前これ好きにさせる気無いだろという尖り具合も、まあ、多々ありますが、なんだかんだで愛着は湧いてきました。いわゆるハーレム構造のゲームですが、それ自体に世界観の謎が仕込まれてそうなので、その辺りがどうなるかも楽しみ。でも私の推しはペコキャルです。主さまにはコッコロがいるからまあいいでしょ。

この間のサイゲフェスでも披露された「Absolute Secret」が最高のペコキャルソングなので、早く音源を売ってください。不憫な境遇に置かれた不器用なキャルが、やはり辛い境遇でも前向きなペコリーヌに救いの手を伸ばされて、あんたなんか眩しくて大嫌いって歌うんですけど、明確な拒絶の歌なんですけど、明らかに泣きながら助けてって言ってるのがね……。同じように不遇な立場にいてもね、ペコとキャルじゃ育ちと性根が違くて、だからこその関係がですね。本編大変なことになってるけど、幸せになってくれ。

あと手軽でストレスがないと言いますが、ガチでやるなら止まった人&取り逃した人から脱落する地獄のマラソンです。上位層は明らかに違うゲームをしている……。

 

3.少女☆歌劇 レヴュースタァライト

 去年からこれは危ない沼だと思っていたんですが、アニメ1話のアタシ再生産でおお!? となり、アニサマできらめきを浴びて、舞台#2でスタァライトされ、2ndライブでレヴュー曲でのアニメ再演を喰らって死にました。キャラクターをアニメと舞台の2層で展開して、どちらも同じ人が演じる、言ってみればそれだけのことが、コンテンツとしてはこんなにも強い。

あと、アニメも凄かった。細かいことはおいておいて、ひたすらに関係性と感情を純化して叩きつけてくる感じ。まひる回から始まり、ふたかお、じゅんなな、衝撃の真矢クロ、そしてかれひかまで、まさに概念という感じでした。約束タワーブリッジとかもう最高でしょ。

そしてアニメにも舞台#2にも貫かれた理念。一瞬のキラメキ、予想もつかない舞台、キリン(=観客)が喜びさえすれば、それが全てに優先して正しいという刹那的な快楽主義が、大変に好みです。俺が……俺たちがキリンだ……。

 

4.宇宙よりも遠い場所

 

まあもうとにかくとんでもなく出来が良いんですよ。そりゃあNYTもベストTV番組に挙げるわっていう。

女子高生たちが南極に行く物語といえばシンプルなんですが、そこには色々な側面があります。青春で友情で、ずっと抱えてきた過去だったり、意味を見いだせない日常だったり。良く出来すぎたキャラではなく生身っぽい、最初は何だこいつって思ってた子たちのことで、途中からはもう毎週号泣ですよ。

そして仲間と遠くへ行くという旅ものの側面! 途中で、ああこれはもうこの子たちはいつか別の道に進んでも、集まればこの時のことで何度でも盛り上がって、またふらっと旅に出て、その瞬間は女子高生に戻るやつだって思ったらもう負ける要素がなかった。そういう旅として13話での旅の終わりまで描き切られて、もう本当に素晴らしかったです。というか私の中でイメージが水曜どうでしょうになった。なんでだ。

それでいて、民間で南極を目指した大人たちにとっては譲れない、夢以上の何かに挑む話でもあって。報瀬にとってもそうですが、これは苦境にあってもなにくそと闘ってきたアウトサイダーたちの物語でもあって、だからこそ「ざまあみろ!」のカタルシスに繋がる訳で、そういった全てがたった12話の中で無理なく完璧に組み上げられている、本当に傑作だったと思います。

 

5.大橋彩香

今年もめっちゃ働いていたうちの推し。PROGRESSのスペシャルライブが本当に素晴らしかったです。明らかに広がった表現の幅、ドラムやダンスといった挑戦、そして変わらない本質としての笑顔と楽しさ。それを前のライブから一足飛びのレベルまで持ってくるストイックさに、大橋彩香というアーティストの可能性を見たライブ。アイマス、バンドリ、ウマ娘その他諸々と、なかなかソロ活動に取れる時間も無いのだとは思いますけど、本当に今後が楽しみ。

しかし、ふわっとしているようで自分がやると決めたことは絶対にやりきる人に見えるので、体にはくれぐれも気をつけてほしいなと思います。ナゴドで歌って踊って1週間もしないうちに国技館でドラム叩いてたのは驚きだった。

 

6.BanG Dream!

A DECLARATION OF ×××[Blu-ray付生産限定盤]

A DECLARATION OF ×××[Blu-ray付生産限定盤]

 

キャラの声を演じる声優が実際にバンド活動をするということの、意味と限界の両方を振り撒きながら、フルスロットルで駆け抜けた一年だったように思います。良いところも悪いところも全てを曝け出して加速するドライブ感が魅力だよなあと

しかし、5thライブのRoseliaは凄まじかった。遠藤ゆりかラストライブ、明坂聡美も大きなライブは実は最後だったステージで、キャラクターを纏いながらそれだけではない何かが立ち上るような、鬼気迫るパフォーマンスを見ました。

そしてアニサマのPoppin'Party。そんなの単独ライブでも見たこと無いよ!? っていうレベルで繰り出されたパフォーマンス、「God knows…」凄かったです。上手くなっているとは思っていたけれど、もう少し、あと少しでそれだけじゃない何かになれるんじゃないかと思ったステージでした。だからこそ単独ライブでも10曲ちょっとの曲数が限界っぽいのはもどかしく、しかし専業ではないし間違いなく頑張ってる訳で、うーん。

あと、曲としてはRAISE A SUILENがゴリゴリのデジロックで好きです。しかしバックバンドとして生まれて、独立して後からキャラがついてメインのコンテンツに並ぶというう流れのダイナミックさをこの規模で。ブシロードにしか出来ないし、やらないことだろうなあと思います。

 

7.ゾンビランドサガ

こんなもん見せられたら、「Cygames、お前が最高のコンテンツを作る会社だ……」ってなりますよね。

事前情報はホラーに見せかけて、出落ちのようなゾンビアイドルものが始まった時は何事かと持ったし、1話はメタルで2話はフリースタイルラップで???と思ってたんですが、ドライブイン鳥&ガタリンピックでこれ面白いぞってなって、6話7話で世代の違う死人たちががグループとしてアイドルをすることの意味を突きつけてきて、そこからは怒涛でした。リリィ回も最高だった。世代とジャンルをまたいでいく曲も最高。そして気がつけばゾンビとアイドルって最高の相性じゃね? って思ってる私がいます。

めちゃくちゃを勢いで押し切るように見せて、回収すべき謎と投げ出す謎の取捨選択の仕方が素晴らしいです。特に最後、幸太郎の物語としても初めから作り込まれていたことが分かるともうね。過去を一瞬のシーンで見せるだけで、彼のやってきたことと想いが鮮やかに立ち上がってくるところは本当に凄い。

そしてフランシュシュとして積み重ねたことが、仲間たちの想いが、さくらの一度は潰えた不遇の人生が、幸太郎の執念が、全てが一点に収束する最終回12話のライブシーンで泣きました。アルピノで、確かにフランシュシュは伝説になった。

ゾンビだからこそ突きつける生きているということの意味。死人は生きなきゃ生きられない。一度のステージに、瞬間に生き様を焼き付けて、時代に咲く徒花になるフランシュシュに魅せられた3ヶ月間でした。

 

8.ドラゴンクエスト

年始にインフルエンザで寝込んでやることがなくて始めたのですが、これが面白かった。ドラクエは7以来ですし、そもそもRPG自体やる気力もなくなって久しいのですが、隅々まで気が利いた作りと、圧倒的な「ドラクエ遊んでる感」の前にはそんな些細なことは吹き飛んでいきました。ストーリーも王道のようでいて予想外につぐ予想外の展開で、最後はああいう美しい収斂をするだなんて。

あとキャラクター含めちゃんと今の時代の作品になっている感じがして、流石だなあと。まあ、うん、普通にベロニカが好きだよね。キャラも物語上の役どころも美味しすぎました。最後にやりこみ要素で叶えられるお願いの中にベロニカを大人ver.にするが無いことだけが不満です!

 

その他

それ以外に印象的だったものを。

ライブ/イベント

2018年に何を言いたいかといえばKalafinaの(結果的な)単独ラストライブの武道館かなあと。流れてくる噂や、メンバーたちの10周年に向けた発言や昨年末の鬼気迫る様子をみてれば、まあ予想はできた。でも、出てきて歌いだして、ああこれは最後だと確信してしまった時の気持ちはなんとも言えなかったです。そんな中で、だからこその、MCを極力配した渾身のパフォーマンスに、10年積み重ねてたどり着いた高みと、燃え上がる最後の輝きを見た気がしたライブでした。掛け値なしに、Kalafinaが生まれてからこれまでで、最高のパフォーマンスでした。凄みがあった。釈然としないものはまだある、特に事務所に対しては。あるけれど、今はただ素晴らしい音楽をありがとうと。

他にも、やはり長く追いかけてると殴られた時のパワーが凄いなと思うライブが多かった印象。サンホラ曲で自分の中に執着があること自覚した1月のリンホラも、歴史を追いかけるごとに記憶がフラッシュバックした1月の岸田教団も、砂塵のイントロからのRevo登場に崩れ落ちた7月の梶浦ライブも。

あとは12月のZAQライブが本当に楽しくて、これだよこれって思いました。

 

音楽

アニソンはキャラクターソングが強かったなあと思う一年。アイマススタァライト、バンドリ、ヒプマイ、ゾンサガと追いかけてた中だけでも凄い量と質だったように思います。特にヒプノシスマイクは出る曲出る曲キラーチューンみたいな勢いで、声優がキャラクターとしてラップをするスタイルの可能性を見せつけた感じでした。どれも良いけど「IKEBUKURO WEST GAME PARK」が好き。あと、ゾンビランドサガのフランシュシュはゾンビが歌い上げるからこその「徒花ネクロマンシー」があまりに強い。
シンデレラ以外のアイマスシャニマスの放課後クライマックスガールズ「夢咲きAfter school」が最高のぶち上げ曲でした。「太陽キッス」も強いので放クラは隙がない。

アルバムでは岸田教団&The明星ロケッツの覚悟が感じられた「REBOOT」が、岸田教団にこんな洗練されたものというか、メジャーっぽさを感じる日が来るとはって思う一枚でした。それから、「ワンルームシュガーライフ」が最高だったので手にとったナナヲアカリの「フライングベスト」、コンプレックスを逆手に取って作り上げたようなキャラクターが完璧です。捨て身で切実で、でも道化っぽくて好き。あとはfhanaの「WORLD ATLUS」がとても良かったのと、相坂優歌「屋上の真ん中 で君の心は青く香るまま」が好みです。

それ以外だとLinked Horizon「楽園への進撃」が、進撃の巨人のストーリーの進行に合わせて以前とは違うテイストになっていて流石の仕事という感じ。あと、さユり「月と花束」がめっちゃ好きです。ああ、こういうの大好きっていう感じ。

 

アニメ/映画

上に挙げた以外でも面白い作品が多かったのは秋クール。「SSSS.GRIDMAN」の特撮を下敷きにした物語の構築の仕方が面白かったですが、この作品最大のトピックは上田麗奈のアカネの演技でしょう。いや本当に終盤は凄まじかった。ミァハ以来のとんでもない上田麗奈でした。うえしゃま天才。TRPG的な「ゴブリンスレイヤー」も、緩急のついた「DOUBLE DECKER!」も良かったですし、「やがて君になる」はおよそ完璧なアニメ化でした。アニメは中途半端に終わった形ですが、変なアニオリをしなかったということでもあるので、気になる方はマンガで続きを是非。

他のクールはあしたのジョーの再解釈みたいな「メガロボクス」、Studio 3Hzへの信頼が揺るぎなくなった「ガンゲイル・オンライン」、スポ根としても百合としても完璧だった「はるかなレシーブ」なども良かったです。あと、「BEATLESS」もアニメの出来はなんとも言い難いところもありつつ、話は今現在でも通用するというか、むしろ書かれた時よりもタイムリーになっていて凄いと思いました。

映画では「激情のワルキューレ」。テーマが発散してうーんという感じのあったマクロスΔが、ワルキューレを中心とした物語という軸を与えられるとこんなに面白くなるとは。

 

スポーツ

阪神タイガースはAクラスに居る時から、こんな試合してて上にいるのおかしいんじゃないの?? って感じだったんですが、実際に落ちてくると得も言われぬ哀しさがありますね……。ただいま最下位。懐かしい響き。伸び切らない若手に当たらない外人に高齢化する主力となかなか前途多難ですが、西とガルシア取ったんだから来年は期待させてくれ。藤浪は復活してくれ。

F1はなんというか、今年もフェラーリが十分以上に戦えるマシンを持っていたのにチームとベッテルのミスで自壊していって、メルセデス&ハミルトンが格の違いを見せつけたみたいなシーズン。何度俺たちのフェラーリ……って呟いたかわからない。
でもルクレールやガスリーという新世代が出てきて、トップチームに移籍する来年は楽しみです。ザウバーで悠々自適な老後を過ごすライコネンも楽しみ。
ホンダはマクラーレンと別れて、トロロッソと一緒に結果は出なかったものの立て直しには成功した感があるので、レッドブルと組む来年はなんとかなってほしい(願望)。でもレッドブルがホンダと分かれる前のマクラーレンみたいなルノーdis&ホンダ上げの発言を繰り返してるので、盛大なフラグなんじゃないかという一抹の不安が。

新日本プロレスは今年はケニーがIWGPヘビーをとったことが一番かなあと思います。ただその後のケニーは、理想とするものや海外進出への旗印なのは分かるけど、今目の前のファンが見たいものは提供できていない感じがあって、それに対しての棚橋の仕掛けたイデオロギー闘争という感じだったのかなと。でも試合をするとG☆Lは本当に抜群に面白いんだよなと年末のGLvs棚オスプを見て思いました。
あとはバレットクラブ分裂から、ジェイの台頭とオカダのベビー化、本体とCHAOSの共闘の流れで後半は来年へ怒涛の仕込みだった感じ。THE ELITEがAEW立ち上げで離脱するかもしれない中で、次への布石なのかなあと思いつつ激動を楽しんでしました。
でも、シリーズとしてはBOSJがとにかく抜群に面白かったです。今年はG1よりも凄かった。あの時のジュニアヘビーには確実に流れがあっただけに、怪我で離脱したヒロムが無事に帰ってくることを願っています。